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【後編】雑談は『吊り橋』と捉えろ!話下手な管理者に”雑談橋”への着眼点とその渡り方 

前編では、”雑談橋”を渡る意義と着眼ポイント、又何より組織に醸成させたいのは”協働する力”と申し上げたが腹落ちして頂けたであろうか全体観と方向性が掴めたところで、次は橋の渡り方だ。渡り方のスキルポイントは2つだ。

①しゃべるな、しゃべらせよ!ー 自身の話を一方的に捲し立てて終わる管理者が結構いる。部下は聞きたくもない話を聞かされウンザリ、二度と橋へは近寄らないかと、、管理者がきき役に廻らなければ、部下の話を引き出せない。管理者が真っ先に身に付けるべき対人スキルの筆頭は「聴く力」であろう。

②橋までグッと引き寄せるには最初のアプローチが肝!ー スピーチやプレゼンはじめ対人対応全般に言えることだが、スタート時の入り方がその後の流れを決める。特に雑談は時間が短い場面が多いので部下が気持ちよくスーと乗ってくるひと言に管理者らしいセンスを見せよう。勝負のカギは導入時にありだ!

”聴く力”や”導入時のアプローチ”を下記の通り掘り下げていますので、さらに工夫・アレンジし、自分ハウ(自身のノウハウ)になるまでクッキングして頂きたい。もし、あなたが口下手だからと部下に対して少し引いているとしたら、それには及ばない。部下に取って上司が全身でアプローチする”行動”そのものに変化を見出し、まずは関心を持つかと、、 さぁー、迷っていたら、吊り橋に向かおう!

”聴く力”のベースになるスキルは「共感的な反応」だ!

一般的に会話が弾む要素とは何だろうか?それは、自分が興味・関心がある話題か、又は興味・関心分野でなくとも、”あっ、この人、私のことを分かろうとしている”と感じさせる時ではなかろうか、、この”分かろうしている”と相手に感じてもらうことが大事だ。そのためにはー①どんな会話内容であろうとも、まずは相手の話を否定せずに、受け止めること。②次に少し難易度上がるが、話の底に流れる相手の感情や真意を感じ取り、感じ取ったことを言葉と表情で表すこと、これが「共感的な反応」である。ex. 「そうかぁ~ それはちょっと辛かったね、、」「えっー、その発言って誰だってカチンとくるよ、、」と短い会話の中でも、相手の感情を察する心情反映がなされる交流があると、不思議とグッと距離が近くなる。
この時に欲しい基本的スキルが、”共感的反応”の代表格である下記のスキルだ。

アイコンタクト(視線)

「目は口ほどに物を言う」「目は心の窓」という諺があるが、目とは視線のこと。言葉をあれこれ並べ立てたり、繕ったりしても、相手の目をみれば、真偽がわかるというもの。確かに我々は言語だけでやり取りをしている訳ではなく、非言語(表情・態度・仕草等)から相手の真意を汲み取り、状況や心情を察しようとする。この非言語の一つである表情の筆頭が視線である。「アイコンタクト」とは視線と視線で意思疎通をはかることだ。

「しっかりと視線を向けるのは苦手、何かお互いが居心地悪くなりそうで、、」「視線を向けたはいいが、外すタイミングが案外難しい」「長く視線を向けて話す必要性がある時は相手の顔のどのあたりを見ればよいか」等の質問がよくある。以下、対応を箇条書きにまとめましたので参考までに、、
  ■”雑談橋”のスタートは、声掛けしながらアイコンタクトを基本とする。
  ■但し、どうしてもアイコンタクトが苦手で気後れするようであれば、相手の鼻あたりに視
   線を置とよい。
  ■視線合わせは、スタート時や終える時は意識してやろう、後は、ここは強調したい、ここ
   は分かって欲しい等か。口元をギュッと締め、相手と視線を合わせると言葉以上に伝わる
   ものがある。ボディラングイッチ(体語)の効用は大きいのでもっと認識したい。
  ■上手く視線を外すには、話の区切りやタイミングで、考える仕草をしながら視線を上部方
   向(天井など上がよい)にゆっくり移していくと自然。
  ■基本的に急に横や下向き視線の動きをすると、不賛同や疑問視的な意味合いに取られるこ
   とが多い。相手が不安な感情(もしかして話が面白くない?それとも反対表明なのか?等
   色々邪推)に成りかねないので要注意のこと。 

うなづき、あいづち、繰り返し

アイコンタクトと同様に”共感的反応”には欠かせないスキルである。アプローチする管理者は、常に雑談を盛り上げていく意識が大事。かと言って、自身の主導で盛り上げ話をするのではなく、あくまでも部下(相手)が中心に。そのために、部下(相手)が乗って来て、話し続けてもどうやら大丈夫だと思えるサインを出し続けること。このサインなるものが、うなづき、あいづち、繰り返し、なのである。詳細は下記の通りだ。

【うなづき】
やり方は大波と小波の2つある。振幅を大きくゆっくりとうなづくのが大波、深い理解や共感を相手に伝える。反対にリズミカルでさざ波の動きが小波のうなづきで、受け止めの気持ちや親しみを醸成。聴き上手と言われる達人は、この2つを上手く組み合せ、あっと言う間にセルフ領域に巻き込む。但し、余りやり過ぎると首振り人形に成りかねないので、ほどほどに、、

【あいづち】
要は合いの手のこと、これが入ると、話が弾む。「それで、それで~」「なるほど-そうか~」「やるねー」「それから、どうしたの?」「それって、凄いよね!」「マジで!」等。短い言葉で、少しトーンを上げて、間髪入れずがポイント。

【繰り返し】
”オウム返し”とも言われる。話の山やキーになる場面で、相手の言葉をそのまま繰り返す手法のこと。コツは自身の感情が大きく動いた時や相手の心情に寄り添いたい時などは、単にあいづち連発では平坦、オウム返しで相手の状況を端的に受け止めること。その上で相手の心情理解の言葉や表情がON出来れば、”あっ、この人分かってくれた”と感じ、次の瞬間、相手の話が加速し始める。これが「共感的反応」の展開で相互の心的距離が縮まった瞬間だ。
例えば、、

例①「昨日、スマホを失くしてね、散々だったよ、、」→ 「えっ、スマホ失くした!(オウム
   返し)ヒャーそれってマジ大変だったね(相手心情理解の言葉)、それで見つかった?」

例②「さっき、電話でね、課長から仕事の事で嫌味言われたよ」→「課長から嫌味!(オウム返
   し)それ、誰でも滅入るよなぁ、、(相手心情理解の言葉)で、課長は、何て言ってる
   の?」

導入時のアプローチがその後の流れを決める

話題の種 

雑談橋の導入話題に、込み入った話やうんちく披露は要らない。一般的に基本のキと言われ、長きに渡り活用されているフレーズがある。「木戸に立ち掛けし、衣食住」である。広く行き渡っているのでご存じの方々も多いであろうが、基本編としてはまずはこのフレーズを活用したい。

①き(木)=季節・気候・天気 ②ど(戸)=どうらく、つまり趣味・マイブーム  ③に=最新ニュース・明るい時事ネタ  ④た(立)=旅・休暇・バカンス  ④ち=知人・著名人  ⑤か(掛)=家族  ⑥け=健康  ⑦し=仕事の様子・近況  ⑧衣=洋服・ファッション  ⑨食=食べ物・料理・グルメ  ⑩住=住まい・通勤交通・近隣の風景

雑談にNG話題=政治、宗教、思想、個人情報的な突っ込み(年齢・職歴・婚姻の有無・年収等)身内の不幸

導入アプローチのコツは相手にフィットする話題をきっかけに相手の人柄や考え方にフォーカスしていくことだ。もし上記のフレーズを複数組合わせ、とにかく話が続けばOKと考えているとしたら、そうではない。単なる情報交換ではないからだ。社員同士の雑談なら悪くはない、もしあなたが管理者ならば、目指す方向性は相手の人間性なりを引き出し、部下の理解を深めるスタンスを持ちたい。例えば、、、

上司:「やあ~ 連日の暑さで参ってないかい?(気候)矢野さんはベランダ男子ときいている
    が、本当?(趣味)」
部下:「ハイ、今はハーブに凝っています」
上司:「ほぉー、ハーブかぁ~(オウム返し)いいねぇ、、(共感性)今はと言うと、ベランダ男
    子もう長いの?」
部下:「今年で10年になるかなぁ~」
上司:「10年!(オウム返し)そんなになるのかぁ、、本格派なんだねぇ(共感性)、、、植物
    って暑さ寒さと自分のこと以上にエネルギィーが掛かり、マジで世話が大変だよね、、
    植物のどんなところに魅力を感じるの?」
部下:「課長、そこなんですよ!断言できますが、”植物は裏切らない!” 実はですね、、、」

もうお分かりかと思いますが、”ハーブ”と聴いて、ついついあなたは、種類は?水やりは?料理に活用?等々、5W1H的な質問を浴びせたくなるが、それは管理者としては少し淡白かと。10年と聞いた上司が単なる情報交流に留まらず、グッと踏み込んだ質問を投げたので展開の質が変わった。最後に質問について深めよう。


   

 

質問する

”雑談橋”の渡り方スキルを数々深めて来たが、少しは前向な意欲が出て来ましたか?いや、まだまだ重いよと言う人に、”雑談橋”最後の砦となる手法がある。それが「質問力」だ。「雑談話題が乏しいせい?いつも会話が長続きしない」「会話はそれなりに続くが相手が乗ってこない」「よく部下と雑談はするが部下との距離感が縮まった気がしない」等であれば、「質問力」を磨きたい。質問は話題を広げたり、方向転換したり、会話を深める手段として、大変重要な展開手法だ。質問には、大きくは次の3つの種類がある。

①クローズド質問・・・「ハイ」「イイエ」で答えられる、又は答えがすでに限定されている質
           問のこと。相手にしっかりと確認したい時やまだ打ち解けてない時の最
           初の質問にはよい。
②オープン質問・・・・相手の考えや意見を自由に返答してもらう質問。自由度の幅があり、想
           いのままに話してもらえる。但し、ある程度の関係性がないと、どこま
           で話してよいかと考え込む人もいるので、状況の見極めが必要。
③切り返し質問・・・・本来は議論で相手の論拠に対して反論することを「切り返し」と言う。
           会話を楽しむ場面では、相手の言葉や主旨がよく分からない時に「それ
           はどういうことか?」「もう少し詳しく教えてくれ」など、相手の真意
           をきき返す時に活用。又、自身が発した内容や考えに果たして相手はど
           う感じたか等、内容やテーマを深めたりの展開も出来る。

          
           

3つの質問の展開

上記3つの質問の活用展開を掘り下げて見よう。例えば、あなた(佐藤)が美術館のCaféで知り合い(近本)と隣り合わせたと想定して、、、

あなた:「近本さん、よく美術館にいらっしゃるのですか?(クローズド)」
近本: 「えぇ、まあまあ、、」
あなた:「今回はおひとりでご来館ですか?(クローズド)」
近本: 「ハイ、ひとりが多いですね、ゆっくり拝見したいので、、
     佐藤さんはどうですか?(切り返し)」
あなた:「私も同じです、自分のペースで廻りたいですよね、(共感性)ところで、、
     今回の長谷川等伯展はどんな感触ですか?(オープン)」
近本: 「そうですね、、ひと言でいうと”気高さと孤高”かな、、実に見ごたえありで、、」
あなた:「ほぉ-”気高さと孤高”(オウム返し)流石です!少し分かる気がしますが、(共感性)
     そこのところをもう少し教えて下さいませんか?(切り返し)」
近本: 「上手く言えませんが、研ぎ澄まされた等伯の覚悟のような気配が漂っている、、、、
     佐藤さんの感触はどうですか?(切り返し)」
あなた:「なるほど、”気配”を感じるのですね、(オウム返し)彼は”見えないものを描こうと
     した稀有な画人”と言う印象かなぁー」
近本: 「”見えないものを描く!”(オウム返し)それって、、」
あなたと近本、同時に:「”松林図屏風”!!」 

すっかり意気投合の二人ですね、なぜ、急速に相互の距離が縮まったのか、ポイントはー
①基本のアプローチはクローズド質問から入る。特に初対面や単なる知り合いであれば、慎重な
 入り(言葉遣いを含む)でまずは反応を見る。
②相手(近本)から、切り返し質問が来ることは感触はまずまずと捉え、共感性も意識しながら、
 早々にオープン質問に入った判断がその後の流れを決めたかと。
③別の読みは、絵画好き、ゆっくり鑑賞派、しかも鑑賞終えたばかりのCaféであれば、人は何か
 しら話したい欲求が高まっている、、読み的中かー
④相手の発言キーワードに敏感に反応し、それをオウム返しで伝えているので、相手も気を逸ら
 すことなく乗ってくれている。→それは何を意味するかというと・・雑談話題を次々と繰り出
 さなくとも、相手の発言に注目し、話のキーワードとなるものをキャッチし、次の展開を見据
 えることだ。
⑤雑談に結論やまとめは不要。会議でも打合せでもないので、その場を楽しむことだ。只ひとつ
 だけ気にして欲しいのは、あくまでも相手中心の展開スタンスをお忘れなく。

 

前編・後編のまとめ

東京オリンピック2020が終わり、今、東京パラリンピックが終盤を迎えている。今日(9/3)は競泳100mバタフライ決勝の日、朝からソワソワ、落ち着かず、、多分、日本中の人達がこの日を待った?のではないかと―その木村敬一と富田宇宙が2年前の世界選手権に続き、2回目のワン・ツーフィニッシュの快挙で幕が下りた。あぁ~よかった!こんな嬉しいことはない!!全盲の木村敬一は表彰台の真ん中に上がっても国旗は見えない、だから国歌を聴きたいが彼の大願。この日、木村は首の金を持ち上げ、大泣きしたくしゃくしゃの顔で歓びを表した。木村敬一選手、富田宇宙選手、本当に本当におめでとう!世界が誇る、スポーツ界の北斗七星ですね、、

パラアスリート達が失くした身体機能よりも、自身に残った機能を開発し続け、”出来ないを出来る”に変え、ついに夢や目標を結実させている。どんなにか絶望を味わおうと、人間の可能性を証明して見せる執念にただただ、敬意だ。案外、我々健常者は、五体満足に甘んじ、挑戦していくマグマのようなエネルギィーが衰えていないか、まだまだ我々には眠り続けている機能(特に脳、及び身体機能)があるということだ。
まずは”雑談橋”を渡ろう、小さな一歩からでよい、そして兎に角、歩み続けることだ!! 
今日は至福の日、ビールで乾杯だ!
(Ⓒ なかざきみねこ)