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【第2弾】”マンネリ症候群”に陥る中堅社員ー組織の閉塞感はどこから来るか?その本質は何か?

誰もが知る経営学者で”マネジメントの父”と言われる、ピーター・ドラッガーは1988年に「今後20年の内に、ヒエラルキー組織は、小回りの利くフラット組織に変わる」と予見していた。つまり管理組織階級は大きく崩れ、管理者数は絞られ、動きやすい組織になるとのことだ。今、30年経た日本企業の組織形態はどうだろうか、、確かにガチガチのピラミット型は影をひそめたものの、ドラッガーが予見したチーム中心の完全フラット型でもない、それはピラミットとフラットの良いところをミックスし組織内に取り込む日本企業独自のハイブリット型組織が多いのではないか、、、従業員にとってそれなりに動きやすく、風通しもよくなったはずだが、想定したほど成果に結びついていないと耳にする、、なぜ、成果につながらないのか?どこが問題なのか、未だ倦怠をもたらす要因は何から来るのか?特に第1弾で取り上げた中堅社員クラスにスポットを当て、漠とした閉塞感を抱える彼らの心の内を通して組織が抱える”マンネリ症候群”の本質を掘り下げたい。

人の心に倦怠感を生む本質要因はー組織がつくりだしている

今、入社して一つの企業に身を置き、定年まで勤め上げる人は少なくなった、だがどんな仕事を選択しても、誰もがマンネリ感に陥ることは日常的に起きうる。特に仕事に就いてはじめてのマンネリ感が襲って来るのは、若手・中堅社員の頃、25歳~30歳前が多いのではないか、、彼らがマンネリ感を持つ理由は大きく分けて3つあるー
①仕事内容が合わない、本人なりに感じる不適職感だ。 
②仕事量の多さ・煩雑さ― 疲れ果てるだけで先が見えない、成長実感が持てない。 
③組織自体の”よどみ”— 口を挟せない空気感、いくら提案事項を仕掛けても聞く耳持たない、
 ここに居ては報われないと感じさせる閉塞感だ—
 
①は1on1の話合いを重ねる中で職務やキャリアの棚卸を通じて改めて仕事の方向性を探ることが出来る、問題は②③である。その解決策として、ピラミット型からチーム中心のフラット化(ハイブリット型)を取り入れ、風通しよくしたはずだ、だが新しい皮袋に刷新しようとも、組織の本質は変わらないという現実がある。その背景に一体何があるのか、、、 

根強く残る独自の組織風土や体質が根底にある

上司の叱責
ハード面(組織形態や制度改革等)は刷新したものの、ソフト面(人間関係や行動様式、人の意識に関するもの)は中々、手強く簡単にはいかない。特に繁栄の歴史を築いた経営・幹部層に権威階級意識が強く根付いていると、マネジメント層も影響を受けるので、経営・幹部層と現場が乖離するという厄介な企業体質となる、、VUCA時代、さすがに現状のままでは生き残れないと認識はしてはいるが、「変化への適応意識」が希薄である。激変社会はスピード感を持って、次に挙げる変化対応への視座が組織の閉鎖性を崩していく。

●企業と社員の関係が大きく変化‥終身雇用の崩壊と共に権威階級意識では組織は機能しない。
 従来型の”相互拘束”から”相互選択”という変化の中で社員の意志が前に出て来る。よって社員
 が働きたいと思える組織風土が生き残り策なのだ。
●変わるリーダーの役割‥これからのリーダーは個々メンバーの能力・主体性の引き出しに注力
 する。一方的な指示や前例主義では指示待ち人間が蔓延り、価値創造は遠のいていく、、
 ICTが普及し、本格的AI到来時代は、柔らか頭でITに強い若い力を存分に活用し、彼らが闊達
 に議論する中で交錯した意見を吟味・検証出来る場が新しいエネルギーを引き出し、それが
 エンパワーメントにつながる。
 つまり、リーダーの役割は自らが引っ張り、範を示すから組織・チームを構成するメンバー
 が成果に向かうための労働環境づくりをマネジメントすることで組織風土が徐々に変わって
 いく。

「心理的安全性」なくして、成果は出ない!

チームメンバーとの談笑
最近、よく耳にするのが「心理的安全性」だ。平たく申すと―「地位やキャリアに関係なく、誰もが率直に意見、気づき、コメント等が言える職場環境や空気感」を指す。それは一見、当たり前で何気ないことに見えるが、組織という成果が求めらる場では上手く行かない現実がある。それは何かトラブルやイレギュラーが生じた時、悪い情報や報告を上司に上げない、事実を隠蔽する、誰かに忖度して口を閉ざす等。それが常態化すると日常のコミュニケーションや情報共有さえも停滞し、ブラックボックス化(お互いの仕事状況が見えない)に向かう。

なぜ、組織の血液である情報や事実が滞るのかーその要因になる隠蔽・忖度は権威階級主義が強い組織体質の中で生まれやすい、、それは、下手に関与すると不利な扱いやパワハラ、最悪、干されるのではないかの危惧がある。つまりこの組織では正しいジャッジがなされないとの疑念が根底にあるのではないか、、、

組織に疑念を持ち、身を縮め、周囲を気づかう中では、とても成果は望めない。いかにして組織への信頼感を取り戻すのか、、それは「心理的安全性」なくして組織は動かない。この難題に取組むには組織全体のビッグエネルギィーを必要とするので、まずは企業トップが本気度を示すことだ。

今、潮目が変わった!マンネリに浸るだけでは、実力は付かないー

世界から絶賛される日本の浮世絵師である「北斎」は死ぬ間際(数え90歳)に残した言葉があるー「あと10年、いや5年の命を与えてくれれば、本物の絵描きになることが出来るのに、、」と。又、名人の域に達したと言われる職人の方々も「まだ心の底から満足できる作品に至っていない」と言う。同じことを繰り返す日々にマンネリ感を感じることも多いであろうが、、ある日突然やって来るハッとするほどの深淵の気づきがマンネリ感を打破するのだろうか?、、深堀探求の芸術分野と即、成果を求められるビジネス仕事領域は一概に比較出来ないが、それでも誰もが認める高みを昇り詰めるには、定型業務もマンネリ感も含み一連を通過する過程が必要なのかも知れない、、、

「人的資本経営」という世界的潮流が日本でも叫ばれ、「人を中心におく経営」が注目されている。潮目が変わって来た今、マンネリ症候群にどっぷり浸っていては、あなたの描く道は遠のく、、自身のキャリアロードの方向性に合わないのであれば、その組織に見切りをつけ、職務転換や転職もある。又、一方で組織に留まり、「部門の長として自身の足元だけでも変えていく」という生き方もある。フラット型(ハイブリット)組織、テクノロジーの進化が日々急速な今日なら、若手、中堅クラスの活躍が早い時期に訪れる可能性は高い。但し、それは、あなたに実力が備わっているかが問われる。
Ⓒ なかざきみねこ