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若い管理者を待つ3難題①人心掌握②板挟み③年上部下 どう切り抜けるか?

VUCA時代に突入する中で自社ビジネスを持続的に発展させていくには既存事業の収益構造の見直しは言うまでもなく、新しい価値創造を常に推進し、その成果を上げるべく、事業戦略の実現に力を注ぐことになる。その際、重要となるのがイノベーションの源泉となる柔らか思考を発揮し、現場をリード出来る優秀な人財である。今、少しづつ落ち着きを取り戻しつつあるコロナ後のビジネス展開を見据えて、企業は若い人財を思い切って管理者に抜擢・育成する動きが加速している。只、いくら優秀であっても、マネジメント経験が皆無に等しい彼らを待ち受けるのは、数々の難題であろう、、若い管理者の3大苦悩といわれるのが、着任時の人心掌握、上層部と部下との板挟み、そしてベテランや年上部下への対応であろう。そこで、不確実時代に生きる管理者のあるべき姿や考え方を中心にその対応ポイントを掘り下げていますので、自らが試行錯誤する中で、本質は何かを捉え、自分ハウ(自身のノウハウ)を構築する手掛かりになれば幸いである。

着任後、新任上司が真っ先に着手すべき重要事項とは?

よく言われる格言に「部下は上司を三日で見抜く」とある。部下よりも上司の方がはるかに厳しい局面に立たされる、ましてや抜擢人事でやって来た若い管理者であれば、尚更であろう。その状況下で人心を掌握することは、むろん高いハードルであるものの、新任管理者にとって何より欠かせない最重要事項なのである。まず取り組む事は下記の通りだー

①組織方針をどうしていくのか自身の方向性を明確に打ち出すことー前任管理者の路線を踏襲
 するのか、そうでないのかを明らかにする。もちろん会社方針に沿って新路線を打ち出すこ
 とも出来るがそう単純なものでもない、、前任路線でそれなりの自負と責任を担ってきたで
 あろう多くの部下達が注視し、事によっては黙ってはいないだろう、、自身の新方針も出し
 つつも、人心が離反することなく組織を円滑に、かつ効果的に滑り出す術、これが「人心掌
 握術」というもので最初の難所?だ。だが、それは新任管理者にとって、まさに人心を掴む
 一番の見せ場ともなり得る。

②では新路線を打ち出し、しかも反発を買わずに進めるにはどうするのか?ーそれは「新路線
 を推進するには必須である個々(部下)の持味や能力を若輩の私に貸して頂きたい」とあなたの
 熱量全開で伝え、その上で「個々(部下)能力をどう活かし、展開していくか」を大まかにでも
 明示できるかだ。

マネジメントの基軸となる新任管理者としての基本方針を堂々と明快に、そして分かりやすく打ち出すことで組織メンバーに新鮮なインパクトをもたらせたら、間違いなく関心を持ってもらえる。

1on1ミーティングを早い内にセットしょう!

次に優先すべきことは新任上司と組織メンバーとの心の距離感を縮めることである。それには1on1ミ-ティングをセットすることだー1on1ミーティングの位置づけとしては、従来の業務進捗的な確認の場としての話し合いではなく、まずは部下を知り、関係づくりに向けた相互理解の場とする。人は誰しも初対面の相手には重い鎧を背負っているもの、少しでも軽くするために上司自身が場を和ませる努力を示す(自己開示)ことで気持ちを向けてもらう。そして残り4割くらいの時間で新路線に対する相手の考えや要望のヒアリングか。大事なことは、上司主導で進めるのではなく、部下にとことん語ってもらうことが出来たなら、上々である。人は話を真摯に聴いてくれた相手を好感するもの、この好感が次に向けた対話促進の一歩となる。

■人心掌握ポイント:新方針の打ち出しは「動的に」、部下との対話は「静的に」つまり、メリ
 ハリつけて、相手を惹きつけろ!

上層部と部下との板挟みジレンマにどう対応するか

若い管理者にありがちな板挟みケースとして、上層部からの過大な要求に「やってみます」と安請け合いしてしまうことだ。抜擢昇進の期待に応えたい、若くともリーダーの力量があることを証明したい等で自身の野心が先行し、組織の力量も考えずに突っ走ることだ。当然、実動するのは組織メンバーなので「なぜ、過大目標を引き受けたのか、現場を全く分かっていない」と容赦なく突き上げて来る。上の期待には応えたいし、部下達の言い分も理解出来る、、上と下との板挟みとなって苦悩することに、、板挟みには2つの管理者判断の甘さがある。

①組織目標や受命案件を実行に移し行動するのは組織メンバーであり、管理者ではない。つい、
 第一線プレイヤー時代の意気込みで引き受けたとしたら、管理者失格だ。今のメンバーの力
 量を睨み、背伸び分(チャレンジ分)を載せてもどのくらい行けるかの試算判断が必要となる。
 →試算判断に迷いがある時は一旦、持ち帰り、自身の中で明確にして返事をする。

②上の考えも現場の不満も”よく分かる”ということは大事なことである。だが、それ以上に管
 理者として大事なことがある。それは、あなた自身が両方を理解した上で”一体どうしたい
 か、どう考えるか”ということだ。そうでなければ管理者と言えども単なるメッセンジャー
  に成りかねない。つまり、管理者としての意思の確立が出来るかだ。
 →それでも、無理を承知で高い目標がくることがあるもの、、その時は、本来の目標はどの
  あたりか、落としどころを読んで、交渉するのも一つだ。その落としどころ数値を部下達
  には伝え、必達を迫る。上との間合いを心得ていく術も大事でベテラン管理者達の指南を
  仰ぎたい。

■上層部と部下との板挟みポイント:上層部の期待や部下達の要望よりも大事なことは、管理
 者として、組織の力量を鑑みた上で、あなた自身がどうしたいかだ!
  

苦手意識が抜けないベテランや年上部下と上手くやっていくにはー

成功している若き起業家は自身より離れた年上の部下を上手く活用している人が多い。自身以外は皆、年上部下だという経営者もいる。”やり辛くないか?”と尋ねると、”一度、似た年齢ばかりで失敗した、年上部下には自身や組織に不足する能力や人脈を補ってもらえる”との弁。今や、会社で上に立つ者は”男性、年上、キャリア上”ではなくなった、多様化が随時進む職場状況を歩いてきたベテランや年上社員はどうすべきかを心得ている。あなたの方がベテランや年上部下を過剰に意識すると、指示を出すタイミングでつい躊躇が出たり、逆に”なめられまい”と必要以上に上司ぶった態度に出るとあなたの器を小さくする、、上司だから”偉い”わけではない、職制上の役割が違うだけだ。肩の力を抜いて、自然体を心掛けよう、とは言ってもベテランや年上社員は人生の先達なので言葉使いは丁寧に。

ベテランや年上社員に限らず組織のメンバーはさまざまであり、自身が描いた通りにはいかないものと心得えた方が良い。私が知る限り、本当に厄介なのは評論家タイプの部下だ。会社情報のキャッチ力があり、その情報をベースに批判だけは旺盛ながら、肝心の仕事の手は抜く、新しい仕事はやりたがらない等のタイプだ。運悪く手に負えないタイプに出くわした時は一人で苦悩せずに、まずは人物評をベテラン管理者にリサーチを掛け、知恵のひとつも拝借すべきかと。
又、手に負えなくなる部下にはそれなりに追い込まれた背景とプロセスがあり、一側面のみで人を判断できない。人は強いようで弱さを抱えているもの、、少しづつコミュニケーションを重ね、信頼関係を築き、人間の心情や生き方をベテランや年上部下とフランクに交わせるようになれたら、間違いなくあなたはリーダーと言える。

■ベテランや年上部下と上手くやっていくポイント:上司と部下は職制上の役割の違いである。
 上とか下とか変に意識するから気を張ることになる。まずは肩の力を抜け!

全 体 の ま と め

今回は若手管理者向けに3つのテーマを私なりの視点で掘り下げたが、少しは参考になったであろうか?すでにお気づきかと察するが、組織は人の集合体であり、その集合体をマネジメントするとは、どのケースも人の思惑や忖度が交錯し、骨が折れるということだ、、よって、若かろうが、ベテランであろうが管理者は人に強くなる必要がある。人の価値観、雇用形態、働く環境(場所含む)の多様化が一気に進む中、益々、マネジメントの真価が問われる。ピープルマネジメントが叫ばれる所以だ。特に若手管理者は自身を含み、人の観察をもう一歩踏み込むと共に率先して対人力を鍛えたい。

もうひとつ心掛けたいのはー社内だけの世界ではなく、軸足を社外にも向け、友人をつくろう。多くはいらない、欲しいのは”肝胆相照らす友”だ。中間管理者の立場は激しく揉まれ、焦燥し、力尽きるほど考え貫く日々もあろう中で自身の弱さを見せ、辛さを語れる友の存在がどんなにか心落ち着かせ、次のエネルギィーをもたらすことか。それは地位や金では換えられない人生の宝となろう。宝探しは待っていてはやってはこない、自らが機会を見つけて勉強会や会合に顔を出すなど、意識して行動しょう。きっと、あなたは生涯の友から人間理解への視座や人生の深さを味合うであろう。
(Ⓒ なかざきみねこ)